アレルギー性の過敏症
どんな病気ですか。
アトピーとは「奇妙な病気」という意味のギリシャ語に由来します。
遺伝的な要因の強いアレルギー性の過敏症で、その反応が皮膚に生じればアトピー性皮膚炎となり、鼻粘膜であれば花粉症、気管支であれば喘息になります。
診断の方法は?
本人や家族がアトピー疾患にかかったことがあるか、顔、肘や膝の裏などにかゆみの強い湿疹が慢性的に起きているかなど、一定の基準に従って診断します。
年齢によって症状の特徴がやや異なり、乳児期には湿潤傾向の強い湿疹が頭や顔に始まり、しばしば体幹、四肢に広がります。
幼小児期には、湿潤性だった湿疹は乾燥性になり、首、肘やひざの曲がる部分に見られるようになります。思春期や成人期になると顔・首・胸・背など上半身に湿疹が強く現れるようになります。
重症になると、皮膚炎が体全体に広がり、ジュクジュクと浸出液が出たり、細菌感染を伴うと化膿してうみが出ることもあり、強いかゆみを伴うため絶えず掻くようになります。
夜間のかゆみのため睡眠が妨げられ日常生活に支障を来すこともあります。
血液検査でアレルゲン(アレルギーの原因となる抗原)に対する抗体の量も調べ、どのくらいのアレルギー体質かも調べます。
IgE RIST、LD、Eo(好酸球数)、TARCなどを指標にして重症度を判定します。また治療法の選定、経過観察の参考にしていきます。
複数の原因が積み重なる
急にかかったり、重くなったりする人もいますね。
何か一つの大きな原因があるというより、複数の原因が積み重なって、とうとう”限界値”を超えて発症するのだと思ってください。
もともとのアレルギー体質に、食生活の不摂生やストレス、睡眠不足、生活の乱れ、運動不足、水や空気の汚れ、ダニやカビ、身の周りの化学物質、衣類や洗剤など、その体質を悪くする複数の原因が加わります。
図Aのように、風呂おけの大きさを「自分の体質」(許容量)とすると、様々な蛇口からアレルギーの原因が流れ出て、ある時とうとう風呂おけからあふれ出すのです。
アトピー性皮膚炎は、異常を知らせる優秀なセンサーの役割を果たしています。
今の暮らし方や食べ方、住環境、生活用品などは安全ですか?見直してみる必要はありませんか?と問うているのです。
そう考えると、文明病ともいえますね。
(図A)
日常の食事にひそむ火種
どの蛇口を閉めればいいのですか(薬物療法を行う前にやるべきことがあります)。
一つの原因だけが突出している例は少なく、どれか一つを止めてもほかから勢いよく出ていてはあふれる水を止められません。
どの蛇口もまんべんなく閉めていくことが、アトピー性皮膚炎の原因を減らすことにつながります。
患者さんを問診しながら8つの蛇口の一つひとつを順番にチェックしていきます。どの蛇口が最も重要な問題を抱えているのか、どの蛇口が一番閉めやすいかを聞き出していきます。
(食物アレルギー(フードアレルギー)の項も参照してください)
実際の診療の際には、8つの蛇口一つひとつに対してチェック表を渡して対策を講じていきます。
ここでは①番目の蛇口を例に取り、説明していきます。
比較的閉めやすくて効果の大きい蛇口は「食生活」です。まず、患者さんに、家族3代にさかのぼって遺伝的体質や食事のとりかたを聞きます。
「好物」「嫌いなもの」「昔好き(嫌い)だったが、今は嫌い(好き)なもの」「妊娠中よく食べたもの」「授乳中よく食べたもの」「嘔吐や湿疹など症状がでたことのあるもの」などを一覧表に書いていただきます。
食生活の歴史から何がわかるのですか。
日常の食事の中にひそんでいるアレルギーの火種です。
同じ傾向の食生活を3代にわたって続けることで、特定の食物を大量に摂取することになり、その食物を消化吸収する代謝システムが疲弊し破綻してしまい、3代目にはそれがアレルギーの原因になるおそれもあるのです。
私は、好んで食べるよく品によって5つに分類します(下記の表)。
アルギー体質の人は、食生活が極端にどれかに偏っていることが多いようです。
偏ることは、よいことではないのです。
※特に赤字のところは痒みを呼びやすいので、できる限り控えてください。 食物摂取表(1週間に何回食べるかなど)を食品ごとに記入してもらいます。 希望者には遅延型(かくれ型)アレルギーを検査します(自費)。IgGまたは/かつIgA検査をすると、本人も気づかない意外なアレルギーが見つかることもあります。よく食べるものがアレルギーの火種になることも…
また、食物日誌を書いてもらうと偏りが一目瞭然となります。
ストレスを発散させ運動も
ストレスにはどう対処すれば?
じっくり話を聞いてくれる医師や友人をもち、ストレスを発散する方法を自分なりに見つけ、常に適度な運動を続けることが大切です。
アトピーになりやすい人は、真面目な人が多く、責任感も強い。もう少しリラックスして仕事や責任をひとりで背負い込まず、厚かましく、小狡くなって欲しいと思います。
ずっとクラブで運動してきたのに、受験期ですっぱりやめてしまうと症状が悪化するケースがあります。
適度な運動は必要です。しかし、過度な運動をしてアトピーが治らない患者さんもいますので、やり過ぎは禁物です。治るのにも体力が要るということを忘れてはいけません。
住環境を健全にするには?
マイホームの住み替えまでするのは難しいけれど、せめて有害化学物質が少ない住宅建材や家具を選び、ホルマリンなどを吸着する活性炭、茶がらなどを利用するようにします。
不必要な化学物質(主としてにおいを有するもの)を室内に持ち込まないようにします。
また、殺虫剤や防虫剤などが室内に拡散しないよう気をつけ、できるだけ使用しないようにし、特に寝室はよく換気しましょう。