アトピー性皮膚炎に対する薬は?
患者さんには、まず、ステロイドを使うか使わないかをお聞きします。
使う・使わないのメリット・デメリットも、より理解した上で判断してもらうようにしています。
とりあえず使わないで様子を見る場合もかなりあります。
乳児アトピー性皮膚炎の場合、基本的には使わないようにしています。自然治癒が大いに期待できるからです(乳児アトピー性皮膚炎の項も参照してください)。
外用薬には何を使いますか?
主にステロイド外用薬(副腎皮質ホルモンの入った外用薬)を処方します。
(ステロイドを使わない治療を希望される患者さんにも対応しますので、お申し出ください)
ただし、あくまでも対症療法にすぎません。
患者さんはステロイドを塗るとアトピーが治りますかとよく質問しますが、ステロイドは治す薬ではありません。今ある症状を、とりあえず抑えるだけのものでしかありません。
原因を調べ取り除く努力もしないで、塗った時だけ良くなる、塗らないでいるとまた症状が出てくるのは当たり前です。
しかし、この治療法でも7〜8割のアトピーの患者さんは何とかコントロールできる場合が多いのも事実です。
一部の人がステロイド一辺倒の医療に疑問を持ったり、コントロール不良になった時に当クリニックを受診してきます。
ステロイドを使うときには、副作用防止の観点から「量」も「範囲」も「期間」も必要最小限にとどめます。
症状や部位あるいは、その患者さんの体質に応じてステロイドの種類や強さを変えますので、間違えないように使うこと。
できれば弱い外用剤から順に始め、症状が落ち着けば保湿剤で経過をみるなど、薬の使い方の基本を学んでいただきます。
目標は日常生活を支障なく送れるようになることにおくのがよいと考えています。
副作用が心配だからといって、いま使っているステロイドを急にやめるのもよくありません。
リバウンド(反跳現象)が予想以上に強くおきる場合があるので、患者さんの希望を聞き、よく相談しながら計画的に減らしていきます。
生活上のさまざまな悪化要因を取り除く努力を続けながら、徐々にステロイド外用剤をやめていくようにすればいいでしょう。
実際には、患者さんの外用剤の使用量は対策が進むにつれてだんだん減っていき、使わなくてもよくなる場合が多く、「いつの間にか良くなった」と言います。
非ステロイド外用剤は基本的には使いません。効果が薄い割に、カブレの危険が高いからです。
プロトピックも成人顔面の治療に対して用いることがあります。小児用の濃度の低い方を用いることもあります。
ステロイドを用いるかプロトピックを用いるかは患者さんごとに、あるいは病状・病期ごとに選ぶようにしています。
保湿剤として良く用いるのは、プロペト・ワセリン・プラスチベース・亜鉛華軟膏・ヒルドイドローション・ヒルドイドソフト・ビーソフテンクリーム・ビーソフテンローションなどです。
塗り心地や使用感の良いものを患者さんに選んでもらいます。
内服薬としては何を使いますか?
漢方薬
漢方薬は、標治(対症療法)と本治(根治療法)に対して使います。
標治に対してよく用いるのは、梔子柏皮湯・越婢加朮湯・十味敗毒湯・桂枝加黄耆湯・白虎加人参湯・黄連解毒湯・消風散・温清飲・九味檳榔湯・当帰飲子などです。
本治には、黄耆建中湯・柴胡桂枝湯・小建中湯・桂枝湯・柴胡清肝湯・荊芥連翹湯・温経湯などを用います。
患者さんごとにこれらのうち最適な組み合わせを選びます。
合併する感染症・イーストコネクション・Leaky Gut Syndrome(LGS)・重金属中毒に対してもそれぞれ最適な漢方で対応します。
抗ヒスタミン剤・抗アレルギー剤
アレルギーも軽度の場合は、抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤がよく効く場合があります。
かゆみが抑えられれば掻かなくなり、湿疹も自然と治まってきます。
眠気の少ない痒みを止める効果の大きい抗アレルギー剤を選ぶのは、アトピー治療にとってはかなり重要です。良くなってくれば当然、漸減していき、痒い時だけ飲んでもらうようにします。
その他の内服薬剤
整腸剤
便秘はアトピーを悪化させるので、便秘対策は重要です。
まず食物アレルギー(フードアレルギー)による便秘(牛乳・小麦が多い)を解消するのが最優先です。
次いで漢方での便秘対策を行います。
その後、その人にあった整腸剤で腸内環境を整えます。
ビオスリー・ビオフェルミン・ミヤBM・ラックビーなどから最適なものを選びます。
抗真菌剤
イーストコネクション対策として、抗真菌剤を用いることがあります。
イーストコネクションが大元にあってアトピーが出ている場合も少なくありません。
ビタミン剤・ミネラル剤など
分子整合医学の理論に基づき、ビタミンB1、B2、ニコチン酸アミド、パントテン酸、ビタミンB6、葉酸、ビオチン、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンA、ビタミンDなどのビタミン、および亜鉛、鉄などミネラルの過不足を分析し、不足しているものがあれば矯正します。